女性にとって快適なお家づくりは企業からも注目されています。
現代の女性はとにかく忙しく、仕事に家事に育児にとやることの種類も量もとても多い!
どんな目線で何をベースに考えたらよいのか、
女性が求める住まいづくりについて、生の声を取り上げました。
2006年7月に広島でリフォーム雑誌を創刊して以来、全国各地の住宅情報誌、住宅の商品コンセプト開発などに関わる。妻、子ども2人の4人家族。
25歳、未婚。中区の賃貸マンションに父母と3人で暮らす。仕事はイベント関係で、趣味は写真加工。収納しきれない衣類が悩みのタネだとか。
29歳、既婚。佐伯区にある旦那さんの実家(1世帯住宅)に暮らす、元家庭科教師。現在はアパレルでパート勤務。1歳、2歳、5歳のママ。
37歳、既婚。飲食業の他、カルチャースクールでDIY講師を務める。趣味はDIYで、某紙にて賞も受賞。整理収納アドバイザーの有資格者で2児のママ。
堀之内(以下:堀) 突然ですが、みなさんは「こんな家だったらいいな」という理想はありますか?
平見(以下:平) ブルックリンやナチュラルなど、家って色んな好みがあると思うんですが、私は建売を購入したので最初からそういうテーマに沿って建てたかったですね。そうすると最初からお金もかからないし初めから自分のスタイルで生活できるので一石二鳥だなと。私の場合は(購入した建売に)コンセントが少ないのが気になったのでDIYを始めました。今は自宅でも修復可能なウォールシールを貼ったり、トイレなどの小スペースなら色を塗ったりして楽しんでいます。だからこれから建てる人はそういうテーマを決めて建てるといいと思います。私は今、家に帰るのも人を家に呼ぶのもとても楽しいです。
堀 なるほど。逆に言うと、建売などのシンプルな家を買ってもDIYとか小物を使うことで楽しむことができるということですね。松本さんや山田さんは?
松本(以下:松) 私は賃貸マンションに住んで6年になりますが、トイレは2つほしい。それから家族間でもある程度プライバシーを保ちたいので、各々の部屋に鍵がかけられるといいですね。また、お化粧の時などに洗面台の鏡が暗く感じるので、鏡周りにライトがあると嬉しいですね。
山田(以下:山) 私は主人の父母と二世帯住宅じゃない家に住んでいるので、寝室も元々主人の部屋だった所に家族で寝ていて、手狭になってきた感じはあります。お風呂が2F、洗濯機は1Fにあって、子供の通園グッズは1Fの玄関近くに置いておきたいので、乾いたものを1Fに、干すのは2Fにと上下に動くのは動線が悪く、動線の優れた家が理想です。
家選び、家づくりのポイントって?
堀 3名の中で実際に家を購入された平見さんですが、選んだ基準は何だったんですか?
平 主人の職場の近くに中古マンションを購入して7年くらい住んでいたんですが、日当たりがとても悪く、とにかく明るい家に住みたかったので、日当たり重視で窓も大きい現在の家を買いました。他に、2LDKだったので子どもが生まれて手狭になったことも理由の1つです。マンションの時も周りに色んな施設があって便利でしたが、今の家も駅近で静かで、快適な生活ですよ。
堀 やはり立地は、他に代え難いメリットですね。
松 マンションから戸建へ実際に移られた方のお話しは、すごく参考になりますね。
堀 松本さんは、家を建てる時にこんな収納・家電があればいいなというものがありますか?
松 家電で言えば、私は衣装持ちなので、洗濯する時に手洗いしないといけないものも洗える洗濯機があればいいですね。それからとにかく収納スペースが多い部屋にしたいし、屋根裏部屋も作りたいですね。
平 収納もですが、コンセントも大事ですよ。例えばオシャレなランプを玄関に置きたいと思っても、靴箱上の飾り棚にはコンセントがないんです。キッチンのコンセントも使い勝手が悪いし。だから友人が家を建てる時はコンセントのアドバイスは必ずしています。
堀 新築を建てる時、コンセントの位置を想像できる人って少ないんですよね。建てる前の状態から暮らし始めた後の「ここにコンセントが必要」という想像はなかなかできない。だから後から、必要な場所に「ない」となるわけです。これは「ここにあった方がいいですよ」と提案してくれる設計担当者が重要になってきますね。コンセントの数を増やすと予算も少しずつ加算されていくので、予算とコンセント数のバランスを見て個数を絞るのがベターです。
住むならこんな土地が理想だけど…
山 土地については、私は今団地に住んでいるので、平地の方が便利かなと思います。でも子供が小さいときは、平地は外に出たらすぐ道路だったり人が多かったりするので、子供の安全面や生活環境を考えたら、少し離れた方がいいのかなと迷ったりもします。
平 私は今も平地ですが、平地しか考えられないです。様々なことにかかる時間も違うし。
松 私も住んでいるところが街中なので、利便性が良いところに住むと、もう他は考えられないですね。
山 実家が南区なので、私と主人の両家の親のことを考えると、間を取って西区あたりで、しかも叶うなら平屋の一戸建てが希望ですね。
堀 生活をする上で利便性のよい立地というのは代えがたいメリットですよね。平地の一戸建てなんかは最高の条件です。場所優先という考えは多くの方が持たれていますが、住まいづくりを進める上でよくお聞きする悩みは、予算と建物と立地条件のバランスをどうするか、です。住まいづくりは建物代+土地代+諸経費の3つから成り立っていますが、平地で交通の便がよい場所は土地代が高くなります。誰しも総予算に上限があると思いますので、利便性を優先すると建物にかける費用を抑える必要が出てきます。このバランスが大事ですよね。平見さんのように、立地を優先して内装はシンプルな建売を購入し、住んでからDIYで楽しみながら部屋を自分で作っていくのは、予算、建物、立地すべての条件を満たせる賢い方法だと思います。
キッチンはこんな風にしたい!
平 食洗機は付いていてよかったですね。ただ、オール電化にせずガスを残したんですけど、五徳の汚れが落ちにくいのはNG。私は調味料入れも木を削って自分で作っているけど、みなさんも普通はわざわざ調味料を出している暇なんてないから見える場所に置くと思うんです。だから調味料入れも元々使いやすい場所にあればと思います。システムキッチンにしまうと省スペースという利点はありますが、結局は自分の置き方がありますからね。
松 私はたまにケーキなどを作ったりしますが、ケーキって色々な器材も使うので、カウンターキッチンである程度広い方がいいですね。我が家はわりと狭いので、料理を作っても置く場所に困ります。
山 私は自分で収納を作りたいと思うので、シンクと水道さえあれば。ただ、水周りは風通しがいい感じにしておきたいですね。
堀 キッチンの使い方は人それぞれなので、自分でカスタマイズできるものがあればいいですね。では最後に、これから家を建てる方に平見さんからアドバイスはありますか?
平 多くの女性は子育てに携わると思いますが、子供も好きだし自分も好きだという家づくりが基本かなと思います。子供達の要望も取り入れていくような。ママだからしなきゃいけないという家の動線じゃなくて家族みんなができるという動線がいいかな。それぞれがどこに何を収納するかが一目でわかる家づくりを最初からしていたら、後から家具を揃えなくてもいいじゃないですか。それから、子供のためにと思って建てると、いずれ子供が巣立ってそのスペースは要らなくなるので、子供のために「子供部屋だからこうする」と決めてしまうと、いずれ使いずらくなってしまうから、成長を考えて建てないといけませんね。
松 なるほど、とても勉強になりました。私は服やアクセサリーがたくさんあって収納しきれていないので、とにかく今は収納をどうにかしたいです。私に比べて、いとこは雑誌やテレビに出れそうなくらいインテリアがお洒落で、いつも羨ましいんです。
平 それは断捨離するしかないですね(笑)。絶対に使う物って、意外と人って限られているんですよ。
山 でも物が多いのを今は楽しんだ方がいいですよ。じきに持てなくなります(笑)。でも確かにいつまでも子供じゃないので、ベビーベッドなどもなくても生活できるわけで。家って大きな買い物だし死ぬまでそこに暮らすので、もちろん子供目線で今のことを考えて色々工夫するのはいいと思いますが、最終的に暮らすのは大人だから、もっとフレキシブルな家がいいのかなと思いますね。
堀 「自分たちの自由にできる住まい」というのが今回のキーワードのように思います。家という箱は、ライフステージによって必要なものが変わってくるので、そういう時にいかにカスタマイズしていくかが大事ですね。その際にDIYなどの方法があるのだと思います。そう考えると、建てるときにすべてを盛り込んだ完璧な家を作らなくても、その時々に応じて変えていってもいいのかなと感じました。今後、住宅業界は丈夫で安心安全な家がさらにどんどん進化していくはずです。そこにIOTやDIYを組み合わせていくと、暮らしがとても楽しいものになるでしょうね。
〝相談をいただいた時から完成まで、全てが良い思い出になるように〟家づくりを進めていくという居藤さんは、実際にお客さんに1日の暮らしぶりをヒアリングし、新しい家での生活を細かくイメージしてもらいます。例えば〝魅せる収納〟を作りたいと思っていても実は収納が苦手な人だったり、子供の年齢が離れていたりウォークインクローゼットがあるにも関わらず、六畳一間の子供部屋が人数分必要だという固定観念を持たれている方は多いそう。そうした細かい部分も丁寧に聞き取りながら、そのお客さんだけに合った家づくりを行っています。また、女性ならではの空間想像力を生かすことで、〝広い空間にしたい〟という要望にも、奥行きや照明、吹き抜けなど多角的なアプローチによって、限られた予算と空間の中でその思いに寄り添っていきます。さらに、動線や収納の快適さはもちろん、玄関ドアが開いた時に外から家の中が見えない造りにするなど、想像しにくい部分の提案も喜ばれています。
▲古民家を家族の形に合わせてリノベーションした物件。個々で多忙な家族が、自然とリビングで顔を合わせられるよう、家の中心に広々としたリビングを配置。キッチンは回廊式でそのまま勝手口や洗面脱衣にも繋がり ストレスフリーな家事動線となっています。
▲玄関を開けた途端道路を行き交う人と目が合い、家の中は丸見えに…。そんなことがないよう、配置やドアの開き勝手にいたるまで熟考された玄関。
▲奥様の家事や子供達の勉強と幾通りにも使えるスタディコーナー。作業の途中でも扉を閉めればリビングは瞬時にすっきり!
●居藤流リビング学習のススメ
ママのそばで勉強できるリビング学習も、ダイニングテーブルを使われると食事の支度がしにくいことも。そこでリビングに、カウンターにも子供机にも使える棚を設置。さらにその上に取扱説明書などを入れるスペースを設けました。家電が多いリビング周りの取りやすい場所に取扱説明書があるため、困った時の使い勝手も抜群!
●TV設置用スペースの確保
50インチ以上も当たり前になってきた最近のTV。なのにその設置スペースを意外と想像できていなかったりします。そうした小さな見落としも、生活に根ざした指摘で解決していきます。
デザインも大切だけど、やはり暮らしやすい家がいい。福繁さんはキッチンでの作業動線はもちろん、日々の大きな負担である洗濯についても女性建築家目線で考えます。洗濯物を太陽光に当てたくてバルコニーやリビングの一番良い場所に干してしまう人が多いですが、洗濯は毎日の家事だから、せっかくの家が洗濯物で見苦しくならないように専用スペースを提案。洗濯機のそばに物干し場とクローゼットがあれば、一連の作業がスムーズにでき日々の家事がぐっと楽になります。また自身の出産・子育ての経験から、家族が集うリビング近くに子供のスペースが必要だと計画。2階に設けることが多い子供部屋ですが、子供が小さいうちは日常生活のほとんどをLDKで過ごす家庭が多いそう。LDKに隣接して和室があれば、子供スペースとしてだけでなく客間としても活用でき、増え続ける子供用品の収納にも重宝します。少し大きくなった子供が自分でスムーズに支度できるよう間取りを工夫するなど、ママ建築士としての実感を子育て世代への提案に生かしています。
▲LDKと連続して子供室を配置。ひとつづきの空間でありながらリビングスペース、ダイニングスペース、勉強スペース、子供室が緩やかに仕切られています。将来は梁を利用して子供室を個室にすることもできます。
▲東側の眺望が良いため、2階をLDKとして広めのバルコニーを配置。南側は隣家に近いためあえて窓を無くしました。
▲洗面室を広めに計画し、洗面脱衣だけでなく、洗濯、室内物干し場、WICの機能も備えています。
●暮らす環境に合った提案
南向きにこだわるあまり、隣のお宅の外壁を眺めて暮らすことになってはもったいない。視界が開けて気持ちの良い方角はどっちか、陽射しや風の流れもしっかり確かめ、その土地ならではの諸条件を最大限生かせるように計画。住宅街であればプライバシーに配慮して窓と窓が重ならないよう工夫したり、育ち盛りの子供の騒音がご近所に響かない間取りにすることも重要です。
●ナチュラルな家づくり
小さな子供も安心して暮らせるよう、無垢の木材や自然塗料、珪藻土の塗り壁などを提案し、自然素材たっぷりのナチュラルな家づくりをしています。
成功!
○バルコニーの壁の高さを高くした。
○ベランダが広い。
○階段の上や下に収納を作ってもらった。
○収納を沢山作った。子ども・旦那の部屋など、皆の要望を取り入れた。
○自宅介護をするようになった時のために半分フローリング。半分は畳。
○エレベーターをつけた事。
○日当たりがとても良い事。
○年寄りの部屋がリビングの側にある。家族一緒の時間が年寄りには良いと思っていたので台所もお風呂もひとつずつです。
○全室床暖房。
○子どもを見ながら家事がしやすい動線。
○浴室とユニットバスを広いものを選んだので、毎日のお風呂がくつろげる。
○玄関口を広くとった。
○洗面所を広くとり、大きな鏡をおくことで、メイクしながら、洗濯もできるように工夫。広いので、そのまま洗濯物を干して除湿をかけています。
…など。
失敗!
×部屋が少ない。
×家族が増え、自分の部屋が欲しいと言われた時にどうしようかと思っている。
×収納が少ないので、物が片付けにくい。
×決める事が多すぎて、途中から疲れてしまい、動線など適当になってしまった。
×ロフトを作った事。
×ウォークインクローゼットが狭い、暗い。
×インターネットのための2階の各部屋のケーブルのためのライン。
×トイレの位置がリビングに近すぎた。
×3階建て。
×電気のスイッチの配置をもう少し真面目に考えれば良かった。
×対面キッチンにすれば良かった。
×湯船に足を入れないと開けられないお風呂の出窓。
×天井の高さ(吹き抜けにしたら心地よい温度になるまでに時間がかかる)。
…など。
《 編集部より 》
様々な意見をいただきましたが、やはり収納に関する成功例・失敗例は多いようです。土地の広さも、その中に建てる家も、そして当然予算も全てに限りがあるからこそ、よくイメージし、よく相談し、(おそらく)一生に一度の買い物を成功させてほしいものです。