誰しもが被害者にも加害者にもなり得る「交通事故」。日常から「交通事故」という言葉はよく聞きますが、皆さんはいざご自身が当事者になった場合の適切な処理や解決までの進み方をご存じでしょうか。万が一、交通事故に遭ってしまった場合に、少しでもお役に立てるように、今回は事故発生から解決までの流れを6つのステップに分けてご説明致します。
ステップ1
【必ず警察へ事故の報告をする】
法律上、交通事故が発生した場合、加害者・被害者問わず事故の当事者には警察へ事故が発生したことを報告する義務があります。警察への事故報告をしないと「交通事故証明書」を交付してもらえません。この書類がないと事故があったことの証明ができないため相手方保険会社に治療費や慰謝料などの請求ができなくなってしまいます。
加害者から「警察沙汰にはしないで欲しい」と懇願されることもありますが、交通事故発生時の警察への通報は義務であると共に、後々トラブルになることもありますので、そのように懇願されても報告は必ずしましょう。
また、加害者から「事故を人身扱いにしないでほしい」とお願されることもあります。事故を物損扱いにしても治療費や慰謝料請求はできますのでご安心下さい。ただ、事故の内容によっては人身事故扱いにした方が良いケースもあります(過失割合で揉めそうな場合等)。
ステップ2
【怪我の治療に集中する】
事故が発生し、警察への報告が終了した後、なるべく早い段階で病院へ行き、治療を開始しましょう。仕事や家のことなどで中々時間が取れないこともあると思います。しかし、事故発生から治療開始までに時間が空いてしまうと事故と怪我(治療)との繋がりが認められず、慰謝料はおろか治療費すらも支払われない恐れもあります。
また、治療開始後、仕事や家庭の都合で通院の期間が1か月以上空いてしまうということも避けましょう。通院が1か月以上空いてしまうと「治療の中断」と判断されて、相手方保険会社から治療費の打ち切りを判断されてしまう可能性があります。
通院回数や頻度は、慰謝料の金額に大きく影響してきますので、定期的に通院しやすい病院に行かれるのが良いでしょう。
ステップ3
【治療の終了(症状固定)と後遺障害の申請】
賠償金額の次に重要と言っても過言ではない、治療の終了時期(いつまで相手方保険会社が治療対応してくれるのか)。怪我の内容や症状によっては、治療をしてもどうしても痛みや痺れ等の症状が残ることもあります。残念ながら交通事故の損害賠償では、症状が完全になくなるまでの治療の継続を前提にしていません。交通事故では怪我が完治したときか、完治しない場合には治療をしても怪我の症状が大きく変化しなくなったとき(症状固定)が治療の終了時期となります。これが一般的な概念とは大きく異なるとともに、相手方保険会社も説明をしないためトラブルになることが多いです。
しかし、治療は終了したもののやはり痛み等の症状が残ることもあります。その場合には、後遺障害の等級が認定される可能性がありますので、後遺障害の申請をすることをおススメします。後遺障害の等級が認定されると賠償金の金額が大幅に増額する可能性があります。
ステップ4
【賠償金額の算定】
治療が終了(後遺障害がある場合に後遺障害の等級が確定)した後、相手方に請求する賠償金額を計算します。相手方に保険会社が就いている場合には、治療終了までに治療費は支払われていることが多いと思いますので、主には、通院慰謝料、休業損害、通院交通費、後遺障害がある場合には後遺症慰謝料、逸失利益という項目を計算して請求することが多いと思います。
また、相手方保険会社から賠償金額の提案をされることもあると思います。その際には、これらの項目に注意をしましょう。
なお、通院慰謝料の算定には、自賠責基準・任意保険基準・裁判所基準の3つの算定基準があります。弁護士に依頼すると最も高い裁判所基準で計算をした慰謝料での交渉が前提になります。
ステップ5
【相手方保険会社との示談交渉】
ステップ4で賠償金額を算定したら、相手方保険会社と交渉を開始します。弁護士に依頼していない場合には、治療終了後、程なくして相手方保険会社から賠償金額の提案がなされると思います。その際の慰謝料の基準は自賠責基準や相手方の保険会社の独自基準であることがほとんどです。早期の解決も大事ですが、賠償金額が提案された段階で一度弁護士に相手方保険会社から提案された賠償金額が適切妥当なものかを相談に行かれることをおススメします。示談書に署名・押印してしまってから、それをやり直すことは出来ません。少しでも提案内容に疑問があれば、弁護士に相談をされるのが良いでしょう。
早期の和解解決の提案には気を付けて!
このように交通事故の最終的な解決は治療が終了し(ステップ3)、賠償金額の算定(ステップ4)が終了してからでないと本来的な解決は出来ません。お怪我の症状にもよりますが、治療1か月程度で早期の解決を相手方保険会社が打診してきた場合には、不当に安い賠償金額での和解の可能性がありますので、注意してください。
ステップ6
【示談成立・賠償金の支払】
相手方保険会社との交渉により賠償金額についての示談が成立し、賠償金が支払われると事件解決となります。
ここまでに至る期間は、お怪我の症状や過失割合の有無等ケースバイケースです。しかし、お怪我をされた被害者からすれば、事故によって体も心も傷つき、先行きが見えない中で治療、保険会社との交渉をしていくことは大変な苦労を伴います。弁護士に依頼することでこれらの苦労を軽減できます。
さいごに
このように交通事故の被害に遭った場合の事故発生から解決までの大まかな流れを6つのステップに分けてご説明させて頂きました。
あくまでこれは典型的な例の1つに過ぎません。これ以外にも入院するほどのお怪我にあった場合、相手方が保険会社と契約していなかった場合、業務中(通勤途中)に事故に遭った場合など、様々なケースがあります。「交通事故」といえども、実際に遭遇すると分からないことも多いと思います。
その道しるべとしてこの記事が少しでもお役に立てればと思うとともに、万が一、事故に遭ってしまった場合には、早期に弁護士に相談だけでもされることをおススメします。