心に残る映画の話。

2021_05_心に残る映画の話。
名画との出会いは、人生を豊かにする。

映画とは、退屈な部分がカットされた人生である。
かのアルフレッド・ヒッチコックは言いました。
いまの人生において、ひとつの「私」しか生きられない我々にとって
羨望であれ、喜びであれ、悲哀であれ、共感であれ、
心に残る映画は、私たちの人生を豊かにしてくれるものに違いありません。

そこで今回は、サロンシネマ・八丁座副支配人の古字麻紗美さんと、
RCCアナウンサーで映画監督・俳優としても活躍する横山雄二さんに
映画の魅力について伺いました。
5月公開のオススメ作品や読者からのアンケートもご紹介しています。


劇場スタッフとして思うこと

映画がもつ魅力
私の場合、仕事もプライベートも映画漬けなので、映画を観るということが自分の中の日常だったりするのですが、けっこう疲れている時も、映画を観ることで元気をもらえたり、自分では経験できないことを疑似体験できたりと、映画は人生の教科書だなといつも感じています。休みのたびに映画の予定をパズルのように組み立てているのですが、その時間が本当に楽しいので、自分は映画に生かされているなぁと実感しています。

映画館で観るということ
ネットでも気軽に映画が観られる時代ですが、やはり映画に集中できる環境は映画館だけが持つ魅力だと思います。真っ暗な空間で映画に向き合うというのが私はとても好きで、今でも劇場内が暗くなって映画が始まる瞬間はいつもワクワクしています。同じ空間で見知らぬ誰かと一緒に作品を共有するというのも映画館ならではの醍醐味ですし、大きなスクリーンと音響で映画を観るというのは映画館でこそ体感できる特別な非日常だと思うので、ぜひ劇場に足を運んでいただきたいです。

コロナ禍での映画業界
コロナの感染拡大等で映画館から足が遠のいてしまった方が多いと感じていたので、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が映画史上に残るヒット作となったことは純粋にうれしいニュースでした。映画館で映画を観たいという方がたくさんいらっしゃるというだけでこれからの希望になります。現在、劇場側の対策としては、マスクの着用のお願いと検温、各回入れ替えごとの劇場内の換気と消毒、お持ち込みもお飲み物のみに制限をさせていただいております。コロナ以前のように戻ることは難しいのかもしれませんが、映画館で映画が上映できることは決して当たり前のことではなくて、本当に幸せなことなのだと日々噛みしめながら皆様により楽しんでいただける環境作りに邁進していきたいと考えております。

心に残る名画探しのコツ
映画はどうしても人それぞれの感性によって捉え方が変わってきたりするので、「名画」というくくりの位置づけが難しいところがあるかと思いますが、個人的には直感を信じるというか、例えばポスターを初めて見たときの「これ好きかもしれない」という第一印象を大事にしています。また、そういった直感を培うために、なるべくたくさんの映画を映画館で観るようにしています。案外どの映画にしようかなと迷った時は劇場のスタッフに思い切って聞いてみるのも良いかもしれません。自分とは違う感想などを聞いたりすると新しい発見があったりしますので…あとは、いつも観ないジャンルの作品にあえてチャレンジしてみるのもオススメですよ。

サロンシネマ・八丁座-副支配人-古字-麻紗美さん
サロンシネマ・八丁座 副支配人
古字 麻紗美さん

廿日市市出身。サロンシネマ・八丁座2つの劇場を運営する㈱序破急の副支配人。異業種から映画の世界に飛び込み、早10年以上。とにかく映画ファーストな毎日で、“映画は映画館で”をモットーに、休日もどこかの映画館に出没中。「映画の感想など気軽にお声がけください!」

私の心に残る映画

若者のリアルを多彩な楽曲で表現
ミュージカル映画の歴史を変えた1作!
大事な作品はたくさんありますが、『RENT/レント』というミュージカル作品が印象深い映画です。まだ前の仕事をしている時でしたが、劇場に4回ほど足を運びました。この作品をきっかけにミュージカル映画が大好きになったので、観たことがない方はぜひ観ていただきたいのと、今観てもメッセージ性のとても強い作品なので、そこにも注目してほしいです。特にオープニングは楽曲のクオリティと演出がとても素晴らしくて、初めて観た時は鳥肌が凄かったです!


監督として、俳優として思うこと

監督としての映画とは
映画って大の大人が寄ってたかって観客を楽しませようと作り上げた珠玉の作品ばかりだと思うんです。ともすると「面白い」とか「つまらない」とか、ランキングやレビューで順位や点数を付けられがちですが、作り手として観ればどの作品も本当によくできていると感じます。今、ちょうど新作『愚か者のブルース』を編集中で、この作品は80年代の雰囲気を出したいと思い、撮影前にむさぼるように当時の作品を観たんですが、改めてどの作品も当時の作り手の真剣さが伝わるものばかりでした。要は「良いか悪いか」ではなく「好きか嫌いか」だけなんだと思いますよ。僕は世の中で一番カッコいい職業は映画監督だとずっと思っていて、40代後半で初監督をして以来、監督をやればやるほどその思いは強くなります。新作で日本を代表するキャスト・スタッフに集まってもらい、そこに臆せずぶつかっていけるのも、感化されてきた映画人たちのカッコよさが僕の中にあるからですね。ただ、自分が主戦場にしているテレビやラジオは無料のメディアで、映画はお金を払って観ていただくので、その違いは大きいですし、自分の作品を観てもらう時っていうのは、全裸でお尻の穴まで見られているような恥ずかしさはあります(笑)。

俳優としての映画とは
普段、我々は俳優さんのキラキラした部分しか観ることがないですが、その裏では台本を覚え、役柄を深く理解していく作業があります。撮影現場で台本を読んでいる俳優さんなんていません。だけど、まったく違うシーンの撮影に飛んでもそのまま役に入れますし、監督から急遽演技の変更が入っても、みなさん当たり前のように演じられます。それを目の当たりにすると、自分たちが思うよりはるかに壮絶な準備をしているのが俳優なんだと思い知らされます。角川春樹監督の『みをつくし料理帖』に出演させていただいた時ですが、僕の台詞は3行だけ。その3行を1000回くらい練習して、どんな時でも言えるようになっていました。いざ本番、自分の3行の台詞に合わせて300人のエキストラが動くという状況に置かれ、あれほど練習した台詞が出てこなかったです。そして、そうやって何日もかけて覚えた台詞も、監督からOKが出た瞬間にもう要らなくなるんです。これからの人生で、その台詞を使うことはもうないんです。だから俳優って常人では考えられないプレッシャーの中にいるし、常に消化し続けていかなければいけない大変な仕事ですよね。でも、こうやって監督として、俳優として映画と関わるごとに、スクリーンにはそこに見えていない人たちの思いが集約されているんだと強く感じます。

映画の魅力とは
一番身近な娯楽であり、そのど真ん中にあるのが映画だと思います。流行の最先端ではないけど、最前線にあるもの。劇場の扉を開ければ経験したことのない世界に連れて行ってくれるし、その世界を誰かと共有もできます。だからずっとデートの定番なんでしょうね。いまだに映画館に行くときはワクワクしますし、それは昔から変わらないです。

中国放送(RCC)アナウンサー-横山-雄二さん
中国放送(RCC)アナウンサー
横山 雄二さん

宮崎市出身。ラジオ、テレビはもちろん、映画監督・俳優・歌手・作詞家・小説家・エッセイ等の執筆など、多彩なジャンルで活躍中。2015年「第52回ギャラクシー賞」受賞。主演映画『ラジオの恋』は米シネマベルデ映画祭で観客賞受賞。監督作品『浮気なストリッパー』ではミニシアターの観客動員記録を塗り替えるヒットを飛ばす。

私の新作映画

横山雄二監督・脚本!
豪華キャストが広島に集結!
広島のストリップ劇場を舞台にした大人の物語
今や過去の人に成り下がった伝説の映画監督・大根は、ヒモとなり、ピンサロ嬢として働くタマコに食わせてもらっている。ある日、タマコの昔の男が「俺から離れられると思うなよ」と現れ、話し合いを行うが、決裂。大根とタマコは大学時代の後輩が館長を務める広島のストリップ劇場に逃げ込む。そんな2人を仲間たちは温かく迎え入れ、ほのぼのとした時間が続くと思われたが、大根がストリッパーに手を出したことからそれぞれのバランスが崩れ…。


広島の映画館
話題作から個性的なものまで様々な作品で楽しませてくれる広島の映画館。
各館、感染症対策も万全で、安心して鑑賞できます。
家では実現できない迫力ある映像とサウンド、そして泣き笑いを共有できる空間に、足を運んでみませんか。
サロンシネマ
八丁座
109シネマズ広島
横川シネマ
イオンシネマ広島
イオンシネマ広島西風新都
TOHOシネマズ緑井
広島バルト11


おすすめ映画Pickup

ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜

ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜
長野オリンピックで日本初の金メダルを狙うスキージャンプチーム。エース原田を複雑な想いで見つめる元日本代表・西方は、前回大会で原田と共に代表選手として出場するも、結果は銀メダル。4年後の雪辱を誓い練習に打ち込んだが、代表を落選。失意の中、テストジャンパーとして大会への参加を依頼され、屈辱を感じながらも裏方に甘んじる。迎えた本番。1本目のジャンプで日本はまさかの4位に後退。しかも猛吹雪により競技が中断。メダルの可能性が消えかけたが…。

■5月7日(金)公開 ■劇場/広島バルト11、TOHOシネマズ緑井、109シネマズ広島、イオンシネマ広島、イオンシネマ広島西風新都


アンモナイトの目覚め

アンモナイトの目覚め
人間嫌いで、世間とのつながりを絶ち暮らす古生物学者メアリー。かつて彼女の発掘した化石は一世を風靡したが、今はイギリスの海辺の町で、観光客の土産物用アンモナイトを探して細々と生計をたてている。そんな彼女はある日、裕福な化石収集家の妻シャーロットを預かることに。美しく可憐で奔放、何もかも正反対のシャーロットに苛立ち、冷たく突き放すメアリーだが、自分とはあまりに違うシャーロットに惹かれる気持ちをどうすることもできず…。孤独の中に埋もれた自分を発掘していく女たちの物語を、繊細かつ大胆に描き上げていく注目作です。

■4月30日(金)公開 ■劇場/サロンシネマ


いのちの停車場

いのちの停車場
東京の救命救急センターで働いていた咲和子は、ある事件をきっかけに、故郷の金沢で「まほろば診療所」の在宅医師として再出発をする。様々な事情から在宅医療を選んだ患者と出会い、戸惑いながらも、まほろばのメンバーと共にいのちの一瞬の輝きに寄り添っていく。その時、最愛の父が倒れてしまい…。金沢の小さな診療所を舞台に、“いのち”に優しく寄り添う医師と、避けることのできない死を迎える患者とその家族が、葛藤し、成長してゆく感動の物語です。

■5月21日(金)公開 ■劇場/広島バルト11、八丁座、TOHOシネマズ緑井、109シネマズ広島、イオンシネマ広島、イオンシネマ広島西風新都


ブータン 山の教室

ブータン-山の教室
若手教師のウゲンは、歌手になりオーストラリアに行くことを密かに夢見ている。だがある日、標高4,800メートルにある秘境・ルナナの学校に赴任することに。一週間以上かけ険しい山道を登り辿り着いた村には電気も通っておらず、学校には黒板もノートもない。しかし、村の人々は新しい先生となる彼を温かく迎えてくれた。ある子どもは、「先生は未来に触れることができるから、将来は先生になることが夢」と口にする。すぐにでも村を離れたいと考えていたウゲンだったが、子どもたちの瞳、そして荘厳な自然とともにたくましく生きる姿を見て、少しずつ変化が…。

■5月7日(金)公開 ■劇場/八丁座




働く女性の映画アンケート
Q1.好きなジャンルは?
Q2.映画を観る方法は?
Q3.作品を選ぶ時の基準は?
Q4.あなたの「一番心に残った映画」を教えて
●大人になってからは、初見で飛び込んだ「鬼滅の刃」です。全く知識なしで観ましたが、大号泣の上、生きるとは、使命とは、なんだか色々考えさせられた内容でした。(あきこ)

●「魔女の宅急便」。何度でも観れる。母になってから観ると感じ方が変わりました。(ぺたくんむ)

●「LION」。実話に基づいているのですが、人の記憶や思い出が鍵となるこの映画を観て、世の中にはこんな生き方をしている人もいるのだと気付かされたから。(aya26)

●「のぼうの城」。WOWOWで流れていたものをたまたま観たのが最初でした。途中からだったので、話の内容はあまり理解できなかったのですが、なぜか目が離せず、のめり込んだことを覚えています。(あかさき)

●「エンドオブザワールド」。核戦争による人類滅亡がテーマですが、一般的なパニック映画とは違って、淡々と静かに滅びを受け入れていく人々の心理描写、オーストラリアの壮大で美しい風景も切なさをかきたて、とても「沁みる」作品でした。(よこちー)

●「ローマの休日」。ストーリーが好きでシチュエーションに憧れました。(シナモン)

●レオナルドディカプリオ主演のシャッターアイランド。どんでん返しがすごい。全員騙されます。(まえこ)

●「タイタニック」。話の内容、映画のスケール共に素晴らしかった。(maron)

●「クライモリ」。極端に暴力的ですが、人も動物を割とむごい状態で食べるなあ、と複雑な気持ちに。(きこ)

●「風と共に去りぬ」。この映画は、単なる恋愛や歴史をテーマにしたものではなく、ヴィヴィアン・リーが演じるスカーレットに男女を問わず、共感できる部分があると感じられる。(まりあのり)

●「えんとつ町のプぺル」。3歳の子どもも一緒に家族みんなで観ることができた。また最近観たのでよく覚えている。(よっちゃん)

●「9人の翻訳家」。セキュリティのしっかりした地下室から、小説がネットに流出する。どうやって?と推理しながら、でも最後で二転三転する展開にハラハラドキドキしながら観ました。(たまこ)

●「アウトブレイク」。子供の時に初めて観たが、あの時から理系に進みたいと思ったから。(りんちゃん)