皮膚科×婦人科スペシャル対談|あなたが美しく健康であるために


身原皮ふ科・形成外科クリニックの身原院長と、さだもりレディースクリニックの貞森院長との対談が実現。
皮膚科と婦人科それぞれから見た女性の不調についてお話しいただきました。
医科共通の「働く女性が気をつけておくべきこと」とは。また、意外と知らない症状の真実とは。
全世代の女性必読の対談です。

ドクター紹介

Dr_sadamori

さだもりレディースクリニック
貞森 理子院長

《Profile》福岡大学医学部卒。福岡大学病院産婦人科、麻生飯塚病院産婦人科、牛深市民病院産婦人科部長、医療法人社団正岡病院を経て、2010年より、しいのレディーズクリニック。2012年同院を継承して開業。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医/日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。


■tel.082-242-1132
■広島市中区大手町2-7-2 Balcom大手町ビル4F

ホームページはこちら


Dr_mihara

身原皮ふ科・形成外科クリニック
身原 京美院長

《Profile》熊本大学医学部卒。京都第一赤十字病院皮膚科、済生会滋賀県病院皮膚科医長、京都府立医科大学皮膚科助手、医療法人厚生堂長崎病院皮膚科部長、熱傷・創傷部門長などを経て、2020年、開業。日本皮膚科学会認定専門医/日本褥瘡学会認定褥瘡医師/日本皮膚科学会/日本熱傷学会/日本褥瘡学会/日本美容皮膚科学会/医学博士。

■tel.082-512-4112
■広島市中区八丁堀14-7 八丁堀宮田ビル7F

ホームページはこちら


年代別に多くみられる症状


身原院長(以下身)》皮膚科では、10代、20代だとニキビやアトピー性皮膚炎が多く、30代になるとシミのお悩みも加わります。婦人科ではどのような症状が多いんですか?

貞森院長(以下貞)》当院で10代、20代に多い疾患は月経不順や月経困難症、30代、40代では子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの良性疾患です。50代からは更年期障害、60代以上になると骨盤臓器脱や腟炎のお悩みが増えてきます。

身》そうなんですね。皮膚科は40代、50代になると老人性疣贅(ゆうぜい)と言われるような良性の皮膚腫瘍やシミ、シワ、タルミなどのお悩みが、またこの頃から加齢によるドライスキンの皮膚トラブルも増えてきますね。

貞》ドライスキンによる皮膚トラブルで多い状態は何ですか?

身》皮脂の分泌は年々低下しますが、そこに不適切なスキンケアがプラスされ、皮膚のバリア機能が下がって湿疹が出てくるケースです。女性だと顔のクレンジングを一生懸命しすぎて、かえって皮膚トラブルを起こす例が近年増えています。

貞》40代以降は、更年期を迎える時期ですよね。50〜51歳が平均閉経年齢で、閉経年齢の前後5年間を更年期と言います。この時期はエストロゲン(※1)の分泌が少なくなります。こうしたことも皮膚のトラブルの要因のひとつかもしれないですね。

身》年代別というわけではないですが、当院は昨年、マスク必須の中での開業となり、とにかくニキビの相談が多く、中でも30代以降の患者さんの多さは印象的でした。貞森先生はコロナ禍での患者さんの変化というのはありますか。

貞》精神的に不安が増し、ホルモンバランスを崩して月経不順になるケースもありますし、例えば更年期の方は介護をしていることも多い世代なので、コロナ禍の影響で入所されている方に会えないという不安感から更年期の症状が強く出る方もいらっしゃいます。

身》介護でいえば、最近、介護脱毛を希望される方も増えましたね。ご自身が介護した経験から自分が介護されるときに面倒をかけたくないという思いで、陰部の脱毛をされます。50代以上の方が特に多い印象です。


(※1)エストロゲン[卵胞ホルモン]:代表的な女性ホルモン。肌や髪の潤いを守ったり、女性特有の丸みを帯びた体をつくったり、体全体の健康を支える役割も果たす。脳や自律神経にも働きかけるため女性の心身に大きく影響するのが特徴。


肌トラブルと女性ホルモン


身》肌トラブルについては、女性の患者さんの多くが月経前後で調子が悪くなったと訴えられます。思春期にニキビができるのも性ホルモンの影響によって皮脂分泌が盛んになるからと言われますが、これは女性ホルモンのバランスによっても皮脂分泌が影響されるからですか?

貞》先ほどもドライスキンの話が出ましたが、ニキビなどの肌トラブルも月経周期に合わせたホルモンの変動が関与していると考えられます。エストロゲンもプロゲステロン(※2)もそれぞれの働きがあるのですが、エストロゲンが排卵にむかって上昇し、その後低下して、プロゲステロンが優位になったとき、皮脂の分泌バランスが変わってくると考えられます。

身》エストロゲンは弾性繊維やコラーゲンの産生にも影響していますよね。

貞》はい、影響していると思います。特に更年期の時期にエストロゲンが低下すると、角質や弾力など肌機能の低下が顕著ですよね。

身》年齢を経てもいつまでも若々しい女性がいらっしゃいますが、これもホルモンが関係しているんでしょうね。ところで、私自身、更年期の症状をあまり感じないのですが、いつもイライラしているからですか(笑)。

貞》そんなことないですよ(笑)。ただ、いつも忙しいとそんなに感じないのはあるかもしれませんね。

身》ホームケアのひとつとして、「エクオール」(※3)のサプリメントは毎日飲んでいますけど。

貞》私も飲んでいます。症状があまりないのは、そのおかげかもしれないですね。


(※2)プロゲステロン[黄体ホルモン]:受精卵の着床のために子宮内膜を整えたり、基礎体温を上昇させたりする働きがあり、妊娠維持に活躍。体内に水分を保つ作用もあり、月経前に体に変化が現れるのは、プロゲステロンの働きと言われる。

(※3)エクオール:女性ホルモン・エストロゲンと似た働きをする大豆由来の成分。様々な健康効果が期待できるとして注目されている。


皮膚科の疾患について


貞》ニキビの治療もひと昔前とは違いますか?

身》はい。今のニキビ治療はガイドラインもしっかりしていて、ミクロの面皰(コメド)から治療するため、面皰形成抑制剤という処方薬をきちんと使用して適切なスキンケアをしていれば重症な方でもかなり改善します。

貞》食生活は関係するのですか?

身》フランスのデータにはなりますが、乳製品の摂りすぎや、チョコレートでもミルクチョコレートを多く摂取すると、ニキビができやすくなることがわかっています。やはり甘い物の食べすぎは良くないと言えますね。

貞》これからの時期の肌の注意点はありますか?

身》そうですね。湿度も高くなり、マスク内の皮膚も蒸れてくると思います。紫外線も強くなりますし、唇のトラブルも。当院ではマスクの付け方からアドバイスしているので、「こんな症状で行ってもいいのかな」という方でも気軽に来院いただきたいですね。不安感の強い日々ですから、お話するだけで安心されたり、美容診療をされてハッピーになる方もたくさんいますから。それと、最近は本当に洗い過ぎで本来持っているバリア機能を損なっている方が多いので、それは気をつけていただきたいですね。


婦人科の疾患について


身》婦人科系で特に注意することは何ですか?

貞》生理痛を我慢したり、生理痛を当たり前と考えるは改めてほしいですね。生理痛がひどい方というのは将来的に子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫のリスクが高まるというのはわかってきていて、それが不妊や産科の合併症の要因にもなります。また閉経しても癌化したり、骨粗鬆症や冠動脈疾患に関係したりと、生理痛は生涯を通じて注意深く付き合っていかないといけない疾患なのです。

身》最近では、低用量ピルを飲まれている方も多いですよね。聞けば避妊目的ではなく、PMS(※4)のために飲んでいると。

貞》ピルはホルモンを安定させるので、生理痛のみならずPMSなどの症状が改善しやすくはなります。ただ、生理痛も子宮筋腫や子宮腺筋症などがある器質性なのか、機能性(頸管狭小や内因性生理活性物質による子宮過収縮が原因)なのかをまずは専門医に判断してもらわないといけないですよね。ピルに関しても内服時に関する注意事項がありますので必ず専門医にご相談いただきたいです。


(※4)PMS(月経前症候群):月経の3~10日位前に始まる、さまざまな精神的・身体的な不調を指す。


美しく健康であるために


身》若い方の子宮頸がんが増えているとうかがいました。検診のこと、ワクチンのこと、男性が媒介することなど、日本は性的な部分がきちんと議論されていないと感じますが、いかがですか?

貞》そうですね。日本は海外に比べて子宮がん検診の受診率がまだまだ低いです。子宮頸がんについては、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であり、一度でも性交経験があれば誰でもHPVに感染する可能性があり、そこから異形成という段階を通って癌になると言われています。

身》では、お付き合いする方ができたらまず検診に行くのが大事ですね。当院では、加齢によるドライスキンももちろんですが高齢でない方でも、陰部のかゆみで来院される方が男女ともに多いですね。腟カンジダの菌は、デーデルライン桿菌がいても増えるのですか?

貞》免疫力が低下したときに入ってきてしまいます。忙しく働く女性が増える中で、おりものシートを当てたままにしていたり、タンポンを長時間抜かずにいる方が実は増えています。これって当然よくなくて、生理用品は適切に使わないといけないし、清潔な手で扱わないといけません。基本的なことを守るのは肌も同じですよね?

身》はい。洗い過ぎないことは先ほど申しましたが、洗浄は優しく最低限として、ベースのスキンケアを十分におこないサンスクリーンを心がけることで健康な肌を守ってもらいたいですね。肌にも月経と同じで何かのサインが出やすいですから、まずはご自分が自身のかかりつけ医として、ご自分を大切にしてほしいです。

貞》かかりつけ医は大事ですね。婦人科としても、ご自分の月経サイクルはきちんと把握していただき、気になる症状があったら、気軽に相談に来てほしいです。



健康な肌のためには、ゴシゴシ洗い過ぎないこと
(身原皮ふ科・形成外科クリニック 身原 京美院長)


将来のためにも生理痛は絶対我慢してはダメ
(さだもりレディースクリニック 貞森 理子院長)




ko-nenkilab

更年期障害・更年期の悩みのことなら
更年期・女性の健康に関する情報サイト